初めてお便りをいたします。
新井と申します。なかなか時間的に都合がつかず、プライベートコンサートへは
出席できず、大変申し訳ないと思っております。
皆様の並々ならぬチェリ狂に圧倒されて、メールを読んでおります。
ところで、田形さんのメールを拝見してこの手紙を書くことにしました。
実は私、96年シリーズのオープニングにチェリがミュンヘン・ゲシュタイクで指
揮しました
ブルックナーの9番を聴きにいきました。初日、2日目と3日目はベト8が予定さ
れていた
と記憶しているのですがベートーベンはキャンセルとなったため、チェリの指揮
は
2日間だけでしたが。
まさか、あれが私にとって最後のチェリ体験になろうとは思ってもいませんでし
た。
当日の演奏、特に初日の会場の興奮はただならぬもので、チェリが舞台に姿を
表すと圧倒的な拍手が起こり、指揮台に立つとうって変わった静寂の世界が広が
り
えもいえぬ緊張感が張り詰めました。(皆さんなら状況は十分ご理解いただける
ことと思います。)
演奏自体は私が想像していたよりもずっと早いテンポで(チェリとしては)淡々
と
進み、正直いって、あれって感じでしたが、それでもすべてのフレーズが有機的
に
結合しながら淀みなく流れていく素晴らしさは感動的でした。
メロディーラインと複雑に絡み合っていく内声(とくに2nd VnとVa)の豊
かな響きと
音量のバランスにはただただ感心するのみです。こんな演奏をすると楽曲自体が
不完全な響きやバランスをもっていると、そのまま聴こえてしまうんだろうな、
などと考えてしまいました。
この時の演奏会でも感じたのですが、晩年の彼の演奏はシュトュトガルトの全盛
期や
80年代中盤のミュンヘンのころほどの完璧さを求めているわけではないのでは
と思いました。息もできないような(息をするのももったいないような)音楽で
はなくて
ホールという共有空間で同じ時間を共有することによって得られる音楽のような
もの
(雰囲気)があるのかな、などと思っています。
もちろん、どちらも大好きでしたが。
取り止めのないことを書いてしまってすみません。
こんなことを書くってことはやっぱり私も結構ハマッてしまっていたのでしょ
う。きっと。
失礼致しました。
Norio Arai
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From: Tagata, Akira[SMTP:akira at wizvax.net]
Sent: Saturday, March 14, 1998 5:48 PM
To: celi-j at mailgate.wizvax.net
Subject: チェリビダッケで好きな事
田形です。
昨晩(3月13日)若杉弘N響ブルックナー9番をサントリーホール
で聴いて来ました。これを聴きながら、3、7、8番を東京で遣って
くれたチェリビダッケが、その後実現しなかった来日公演で9番を予
定していたのを思い出していました。昨日の演奏に接しながらつくづ
くチェリビダッケで聴きたかったと思いました。(若杉氏への悪口で
はありません :-)
もう大分前ですが、NHK−FMが、ヒデミット「画家マチス」とブ
ルックナー「9番」の公演(ミュンヘンフィル)を流したときが僕の
初めてきちんと9番を聴いた時でした。録音したこれを繰り返し聴い
た覚えがあります。ロココから古い演奏(南ドイツ放送交響楽団、後
のシュトゥットガルト放送交響楽団?)が出てましたが、これは録音
が荒れていて余り聴きませんでした。
チェリビダッケの演奏で僕の特に興味を持つのは、ソナタ形式の第2
主題を、斯くも第1主題と際立たせた対比を聴かせてくれる事、そし
て再現部でその統一した姿を現出してくれる事です。これは教科書に
載っているソナタ形式の図式そのものですが、創作家がソナタ形式を
採用した意図を忠実に教えてくれるので、僕はチェリビダッケのこの
やり方を大変好ましく感じます。ブルックナー9番の第1楽章が正に
その典型の一つです。第2主題の抑制した速さとテヌートがそう感じ
させるのでしょうか。(同様にチャイコフスキー「悲愴」第1楽章、
第2主題で同じ事を感じます)
もう一つ僕の好きなのが、チェリビダッケがスケルツォで的確なリズ
ムを刻む事ですね。ブルックナー9番のスケルツォをこうも正確なリ
ズムで聴かせてくれるのは、やはりチェリビダッケです。この早い曲
をリズムの淀みを感じさせず安心しながら身を委ねられるのは心地好
い限りです。(同様にドヴォルザーク「新世界から」スケルツォでも
感じます)
昨日のコンサートをきっかけに感じた事を書きました。みなさんは、
それぞれチェリビダッケのどういう所が好きなのでしょうか。
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Akira Tagata <akira at wizvax.net>, <tagata at ibm.net>